祖先崇拝とトートーメー【元琉球王族、尚家が語る沖縄への想い】
祖先崇拝とトートーメー【元琉球王族、尚家が語る沖縄への想い】
(写真:歴代王女位牌と筆者)
祖先崇拝への想いがあついとされる沖縄では、祖先の名を記して仏壇に安置する位牌は最も重要な信仰の対象とされます。その信仰形態は、他県にはみられない独自の形式を以て受け継ぎ伝えられています。
今でこそ各家庭に仏壇があり、そこに位牌が安置されていますが、15世紀~17世紀の琉球王家や上流の士族の先祖供養の仕方は異なり、お寺に位牌を安置しての位牌祭祀が執り行われていました。しかし、1781年編纂の『球陽』によると、その頃まだ先祖崇拝の位牌祭祀は浸透してなかったようです。古い時代から王府との関係が濃い久高島でも最初の家が位牌を備えたのは、大正末の事であると報告が記載されていたりします。中には近代以降にはじめられた例もあります。
しかし、その前から独自に祖先を敬う年忌にあたるものの記述もみえ、形は違えど祖先崇拝を大切にしてきた事が伺えます。沖縄では位牌の事をトートーメーと言い、トートーメーはもともとは尊い方、尊いものを意味する首里辺りの言葉で、童歌にある「トートーメーサイ トートーメー」とは月のことで、古くは月も祖先の位牌も尊い存在として同じ呼び名でありました。
時代を経て現在では、位牌の呼び名として定着しております。
位牌の素材は、高級品はチャーギ(イヌマキ)で、位牌の種類は神主(しんしゅ)、屏主(へいしゅ)、操出位牌の三種類があります。最も格式の高い位牌は神主のガーナーイフェーと言われ、王族や按司、一門の初代と言う特定の方に用いる特殊な形式であります。1733年から歴代国王の位牌は神主から屏主に作り替えたと言う記述があり、それまでは神主位牌が王家、按司では主流であったようです。
沖縄には門中という一族を大切にする制度があり、門中のムートゥヤー(宗家)において位牌継承はとても大切なものであります。宗家は元となる本家の事で、本家の位牌はその家の先祖から子孫へ受け継がれていきます。分出位牌は分家に代々引き継がれていくと言う形です。長男相続という継承の仕方は厳格に決まっておりますが、『那覇市史』の家譜資料などによると、18世紀には長男が廃嫡または相応しくない場合は、次男継承、三男継承、または門中継承や血族では無い他家養子などを認め、適切に継いでくれる方に祭祀継承を任せていたようです。
本土では、女系継ぎや末子継ぎなどの方法もあり、その時代を生き残る為に様々な理に適った方法にて継承をしていたようです。
私も子孫への負担を考え、その時代に即し継承を考えて行きたく思います。
【筆者】
尚 衞(しょう まもる)
尚本家第23代当主。
1950年生まれ。
玉川大学卒業後、アメリカアラバマ州、サンフォード大学(Samford University in Birmingham Alabama U.S.A)にてMBA取得。
一般社団法人 琉球歴史文化継承振興会代表理事として務める。
◆一般社団法人 琉球歴史文化継承振興会
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