日本遺産【御三味(お供えもの)】について【元琉球王族、尚家が語る沖縄への想い】
日本遺産【御三味(お供えもの)】について【元琉球王族、尚家が語る沖縄への想い 特別寄稿⑬ 尚本家23代当主 尚衞】
皆さん、こんにちは。
今回は日本遺産の「御三味(ウサンミ)」についてお話したく思います。
御三味とは御清明祭の時期に親族が集まってお墓参りを行う際に、各世帯が持ちよるお供え物の事で、お参りの後墓庭に敷物を広げて皆で御三味をいただきます。
今回は尚家の御清明祭の御三味をご紹介させて頂きます。尚王家の御清明祭についての詳細が記述された資料は、残念ながら戦中戦火により焼失してしまいました。戦後、尚家直系親族のみで玉陵を管理し、御清明祭を執り行って来ましたが、家族のみですので、真心は籠もっておりますものの御三味も私の母や参列の方の手作りの物が多く祭祀を質素に行っていた記憶がございます。
現在の尚家直系の御清明祭は、当代の当主である私尚衞の主催する下、親族のみで執り行っております。
御清明祭は、戦後の尚家直系の御清明祭を経て、再び古式に則りたいとの熱望に至り、1870年より連面と続く伊是名村での公事清明祭を勉強させて頂きまして、御三味も現在の公事清明祭と同じものをご用意出来ることとなりました。最初に執り行われました公事清明祭は1870年の清明の節ではなく、旧暦八月に行われており、「御初祭」と称しました。その当時の御三味は『御三味物拝調御盛合之仕様并御菓子腰掛』に調理方法など記され、王府より伊是名島に料理担当者が派遣され、御三味の作り方を伝授したとのことです。
それによりますと、伊江王子一行に従って伊是名島を訪れた者の中で、御包丁人、小盤、御菓子作の役の者が御三味の調理方法、盛り付け方、御菓子を作る際の材料などを細かく点検し、文書に残したとあります。その当時の御三味は以下になります。
はせを実(芭蕉の実)、萩(真萩)、かすてら、(カステラ)春餅、かい(塩吹貝)、ふた頭、(豚頭)あひる、(アヒル)御酒、九年母、(熟唐九年母)まんてう(饅頭)魚(生白魚)、あん餅、(飴餅)鳥(ニワトリ雄鶏)の種類で、各それぞれのお供えの数も決まっております。
初めて伊是名島のウサンミを拝見させて頂きました時、その独特の風土のお供え物の数々に驚き、この伝統は継承していかなければならないものだと思いました。
春になりますと、御清明祭の時期になります。去年は新型コロナウイルス感染症により念の為、玉陵での御清明祭を中止させて頂きましたが、今年は新型コロナウイルスのワクチン接種が順次出来る事が決まりましたので、私もワクチンを接種し万全を期し、何らかの形で開催出来る事を願っております。
皆様も日本遺産になりました『ウサンミ』を機会がございましたらぜひ御覧下さい。
尚本家 23代当主 尚衞
【筆者】
尚 衞(しょう まもる)
尚本家第23代当主。
1950年生まれ。
玉川大学卒業後、アメリカアラバマ州、サンフォード大学(Samford University in Birmingham Alabama U.S.A)にてMBA取得。
一般社団法人 琉球歴史文化継承振興会代表理事として務める。
◆一般社団法人 琉球歴史文化継承振興会