ものづくり特集:宮古島で地元の素材と出会う工房vol.2
vol.1に続き、7月4日にオープンした、宮古島の古民家の一部を改装した工房&ショップのお話。「あだん細工」の「チームあだん」代表、藤原笑子さんと「月桃細工」の「月桃のかごや」池田波子さん。
vol.2は「月桃細工」の作家、池田波子さんのお話です。
月桃について
あだんと同じく、月桃も沖縄ではとても身近な植物で、今はちょうど花が終わった時期です。「月桃の歌」という戦争の慰霊の歌は沖縄の人はよく知っています。
花も美しく、小さな種のたくさん入った巾着のような実も可愛らしい。葉の触り心地はすべすべしっとりしていて、笹の葉よりもっと艶があり、食べ物を包んだりもします。香りが良くポリフェノールも多く含まれ葉や種を月桃茶として愛飲される方も多くいます。捨てるところがない素材です。
編む材料としては5、6月の花の咲く頃は硬いのでその時期以外だったらいつでも採れます。自宅の周りにもたくさん植えているんですが、足りなくなると伊良部島の農家さんが大量に植えて群生しているところがあり、そちらにいただきに行くことがあります。
ものづくりは昔から好きだった
小さい頃から何か作ったり、宮古島に来てからは貝細工など、ものがあると何か作りたい欲は昔からあったけれど、自然素材で細工をちゃんと始めたのは月桃が初めてです。
埼玉県出身で「ちゅらさん」や沖縄のダンススクールの女の子たちが活躍していた沖縄ブームの頃、沖縄旅行にハマって何度も足を運んでいて、20年くらい前に移住ました。
今は内陸の方に住んでいるので、普段はあまり海が見えずあまり島暮らしだと意識しないのですが、3本の橋があって、海を渡る時は何度見ても「宮古島最高!」と思います。午前中の海の透き通っている色が本当に綺麗で、贅沢です。
月桃との出会い
月桃との出会いは5年ほど前。障害者の福祉施設で働いてた時に、利用者さんに教えていました。スタッフが材料採りから商品の提案など全てに携わることから、知らなければいけない立場で、仕事として仕方なく、面倒くさいなと思っていたくらいです。
ある利用者さんがすごく器用で、目が不自由な方で手と感覚だけでかご以外にも龍や虫の形など、考えもつかないような見事な出来栄えのものを次々と作っていたんです。
昔おじぃが作っていたのを見ていたのか、たくさんの編み方を知っていてその作品を手伝っているうちに、いろいろな編み方を教わりました。施設の仕事を退職した後も、小さい島なので、会うこともあり「月桃やってるか〜?」と声をかけてくれます。
あとは独学で、ちょこちょこ作っては人にあげていたのですが、作っているうちに腕も上がってきたので「染織布とキリムの店ゆう」で販売してもらえるようになりました。こちらではただ単に作って売るだけじゃなく、宮古島のいい素材を使って価値あるものを作りましょうという勉強をさせていただきました。狭いエリアだからか、いい出会いが繋がっていく感じが島ならではです。
月桃で作るもの
材料には1.5mほどになる茎のそのままをなめしたり、縄に綯ったものを編んでかごや円座(座布団)を作ります。農作業の道具などを入れる為の民具「あんつく」と呼ばれるポシェットやトートバックのように編まれたものは、今時のファッションにもあう、とても洗練されたデザインです。好きな方も多く、私用に作る方はいて、スーパーでも持っている方を見かけます。
自分で使いたいデザイン
古いものの質感や作り方を残しつつも、若い人が使いたいかとか、自分で使いたいと思えるかごバックのデザインにしています。雑貨もインスタにあげている取手のついた鍋敷サイズの敷物は、リクエストが多く作ったものです。
教えてくれる場所がない
「月桃細工」を教える方は何人かいて、公民館講座などを開催してはいるものの、ここへ行けば教えてもらえるという場所が今までありませんでした。今回立ち上げた「あだん工房」を拠点に、もっと月桃細工を広めていきたいです。ものづくりにはなんせ時間がかかりますので、急激に盛んになることはないと思いますが、ここから地道に普及していけたらと思っています。
月桃は手触りも硬くなく、竹、あけび、山葡萄などより扱いやすく、初心者向き。力が入らず少々緩くてもそれなりに形になり、ワークショップで教えて完成しない人はいないくらいです。中心からぐるぐると円状に巻いていくものが基本です。湿らせて柔らかくしながら編んでいきますが、湿っているうちにアイロンを当てると熱で艶も出ます。
小さいものはコースター、それが大きくなったものが円座(座布団)。サラサラの触り心地と、硬さもほどよく腰痛の方にも評判です。イグサより硬く弾力があり、ムチっとした感じです。
皆さん、かごを作りたいと言われ、かごの講座は人気ですぐに埋まってしまいます。欲しいサイズのものができるし、長持ちもします。月桃のみでできているので、ゴミにならず、土に還ります。
コロナ禍での外出自粛は制作時間
外出自粛期間は、外に出てはいけないというので、制作期間だと開き直って割といい時間だなと過ごしています。工房でも材料を広げて作っていて、お客様がいらしても物が出っ放しの状態。それもまた興味深そうに見ていただいて、お話ししたり、そんな場所が欲しいとずっと思っていました。それまで1人で黙々とやっていたので、「チームあだん」の他の作り手さんたちと情報交換もできるし、人とやるとヒントがたくさんあります。
vol.1の「チームあだん」藤原さん、vol.2の「月桃のかごや」池田さんのお二人が出会い、始まったばかりの古民家の工房。素材やものづくりの魅力もさることながら、お二人がいきいきと取り組んでいらっしゃることが何よりこの工房の魅力です。古民家のオーナーさんは、これから、宮古島のいろんなアーティストが集まる場にしていきたいとのことです。
ワークショップやお二人との会話でとても楽しい島時間が過ごせる場所になりそうです。まだまだ置いている商品は少ないということですが、観光の際はたっぷり時間を作って訪ねたいですね。
モノづくり特集:宮古島で地元の素材と出会う工房vol.1「チームあだん」藤原さんのお話はコチラから!
あだん工房
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