沖縄本島の北部に残る伝統行事のひとつ ウンジャミ -海神祭-
旧暦の7月17日(新暦8月27日)。
伊平屋島の田名集落では「ウンジャミ」が行われました。
「ウンジャミ」は「海神祭」として知られ、
特に沖縄本島の北部に残る神行事のひとつです。
その謂れ、始まりは地域によって異なることもあり、
今日は伊平屋島の田名集落に伝わる「ウンジャミ」についてご紹介します。
その昔、いつの時代なのか定かではありませんが、
喜界島(※注1)のノロ(※注2)が首里に行く途中に時化に遭って
伊平屋島に流れつきました。(「首里からの帰り」説もあり)
そのノロたちを助け、介抱し、時化がおさまった頃に、
喜界島のノロたちの船出を田名のノロたちが見送ったのが
田名のウンジャミの始まりとされています。
午前9時半頃。
神女の方々が次々に田名神社にやってきます。
かつては22人いたとのことですが、この日は6人でした。
高齢化や後継者がいないことで少しずつ少しずつ減少しているとのこと。
それでも毎年欠かさず執り行うことができるのはやはり地の持つ力だと思います。
午前10時頃、見学の人たちにもお神酒が配られました。
その後、布で船形を作った囲いの中や周囲に神女が並び、「メーヌカイ、メーヌカイ」と言いながら
「オー」(※注3)で船を漕ぐような仕草を東西の方角に向かって行います。
そして、場所を移して拝み、最終的にはアハシと呼ばれる海岸まで移動します。
かつて喜界島のノロたちの航海安全を祈念したと言われる田名のウンジャミは
今でも喜界島の方角に向かって午前の部最後のお祈りをします。
今年は台風の多い年ですが、この日は天気にも恵まれ船出には最高の日でした。
午後5時頃。
再度、田名神社に集まります。
神主の男性が「テルクグチ」(※注4)を歌い終えると
お供えをしたご馳走をみんなで食べ、今年のウンジャミは終了しました。
今日のお祈りが海の彼方の喜界島まで届いているといいなと思います。
※注1 鹿児島県の奄美群島北東部に位置する島
※注2 神女
※注3 「ダンチク」という暖地の海岸近くに生育するイネ科の多年草のこと
※注4 古謡。祝詞のようなもの
記者:叶雅美(伊平屋村)
奄美大島出身。
大学卒業後、田舎や島をフィールドに地域づくり事業に携わる。
2012年、沖縄県最北端の有人離島・伊平屋村へ移住。
観光コーディネーター・地域コーディネーターとして村の振興に関わる。