投稿日:2024.07.25

池原酒造〜石垣島の小さな酒蔵から世界へ〜

沖縄県石垣島にある池原酒造は、創業から70年以上の歴史を持つ老舗です。代々家族経営で営まれてきたこの酒造は、現在3代目の池原 優さんが引き継ぎ、​​今もなお昔ながらの手造り製法を守りながら、ていねいに製造しています。

池原酒造といえば、看板酒は「白百合」。 

沖縄に数多くある泡盛の中でも、特に個性的な味わいで知られ、昔からの根強いファンも多いお酒です。 

そんな池原酒造は今、世界に大きな波を起こそうとしています。

2021年 サンフランシスコ・ワールド・スピリッツ・コンペティション 最優秀金賞受賞

2021年には、米国最大のスピリッツコンペ「サンフランシスコ・ワールド・スピリッツ・コンペティション 2021 (SFWSC)」で、泡盛部門の【最優秀金賞(ダブルゴールド)】と【ベストオブクラス】に選ばれました。

受賞したのは、代々受け継がれてきた「白百合」の特別限定酒。戦前の泡盛製造に使われていた伝統の黒麹「イヌイ菌」で、通常の黒麹よりも手間をかけた仕込みを行い、粗濾過で仕上げることで、イヌイ菌ならではの風味と、白百合の濃厚な味わいを引き出した、力強い泡盛が生まれました。

この受賞は、池原酒造にとって大きな快挙であり、世界にその名を広める重要なステップとなりました。

世界へ泡盛を広めるために考えたのは、「泡盛×カクテル」

日本では若者のお酒離れが進んでおり、度数の強い泡盛もその影響を受けています。その中で池原さんが今見据えているのは、海外市場、特にアメリカです。日本酒は広く知られていても、泡盛の認知度は残念ながら海外ではほぼゼロに近い状況です。

では、どうやって外国人の興味を引きつけたのでしょうか。

池原さんが考えたのは、「泡盛×カクテル」でした。

「バー文化のあるアメリカに泡盛を受け入れてもらうには、カクテルとのコラボレーションが有効だ」と考えたのです。池原酒造から徒歩3分のバーで、実際にそのカクテルが飲めると聞き、その夜バーに訪れました。出してもらったのは「エスプレッソマティーニ」。通常はエスプレッソ、コーヒーリキュール、ウォッカから成るものを、ウォッカの代わりに「白百合」を入れて作ります。「白百合」独特のコクと風味がエスプレッソの苦味と絶妙に調和し、飲みやすさと力強い味わいが見事に共存するカクテルに仕上がっていました。

撮影、提供:ショットバー サマーグラス

多数アメリカの展示会に出展し、そこで認められながら泡盛の世界進出に向けて着々と準備を進めています。

従業員2名、だけじゃない。「シラユリスト」が支える池原酒造

海外だけでなく、国内でも様々な活動を広げています。

毎年、日本各地で池原酒造主催の泡盛パーティーも開催されているそうです。

家族経営で従業員は2名。沖縄の中でも石垣島という離島に位置する池原酒造が、これほど精力的に活動できる理由は何でしょうか。池原さん本人は寡黙な方で、慌ただしく世界中を飛び回っているせわしなさは感じません。毎日の酒造りもあります。

その理由は「シラユリスト」にありました。

「シラユリスト」とは、泡盛ファンの中でも特に熱狂的な白百合ファンのことです。日本各地で開催される泡盛パーティーは、この「シラユリスト」たちが運営スタッフとして手伝ってくれているのです。

この強力な支援体制が、池原酒造のもうひとつの活力源になっています。

次の計画は「泊まれる酒蔵」

池原さんの挑戦は泡盛作りだけでなく、泡盛を軸に新たな事業進出へと広がっています。

次の計画は、「泊まれる酒蔵」。

酒蔵の一部を改築して、1組限定の宿泊施設を併設する計画が進んでいます。

蒸留や米蒸しの甘い香り、ブクブクという発酵の音に包まれながら、お気に入りの白百合を片手に過ごす時間。なんとも贅沢な時間が過ごせそうです。

池原酒造の素晴らしいところは、新たな挑戦を続けていく中でも、根幹である昔ながらの手作り製法を守り続けているところにあります。その上で、発想力と共創力によって、離島にいながらも多くの人と繋がり、世界を広げています。

その拡大力には、大きな可能性が秘められていると感じました。

石垣島を訪れる際には、是非池原酒造を訪れてみてください。

池原酒造HP:https://www.shirayuri-ikehara.com/
Instagram:https://www.instagram.com/shirayuri1951/
住所:〒907-0022 沖縄県石垣市大川175
エスプレッソマティーニを提供するショットバー サマーグラス:https://tabelog.com/okinawa/A4705/A470501/47006815/