与那国島で受け継がれる伝統、与那国織・トゥンビャンのご紹介
みなさん、「与那国織」を聞いたことはありますか?
沖縄の歴史では民芸、特に織物が重要な役割を担っていましたが、作られる地域・職人さんによって模様や行程は異なり、地域特性や個性が表現されるものとなっています。今回はその中でも与那国島で受け継がれてきた、与那国織を取り上げたいと思います!
今回取材に応じていただいたのは、伝統工芸士にも任命されている請舛(うけます) 姫代(ひめよ)様。「とぅんびゃん」という工房をもち、与那国織、そして幻の糸「トゥンビャン」の魅力を島内・島外に広めている第一人者です。
※本コラムでは工房はひらがなで「とぅんびゃん」、糸についてはカタカナで「トゥンビャン」と表記します。
与那国織の歴史
与那国織の歴史は15世紀までさかのぼると言われています。朝鮮の史書「李朝実録」※ によると、1479年(室町時代)には既に与那国島では機(はた)で布が織られていたことが記載されています。
また、16世紀前半には献納品として琉球王府へ納められており、当時は役人のみが与那国花織の着用を許されていたそうです。戦中戦後は糸の入手が難しいため、漁業網を解いて織っていた時期や機織り自体が途絶えていた時期もありましたが、1979年(昭和54年)には与那国織の復活を目指して「与那国町伝統工芸館」が建てられ、今日まで織物文化を伝え続けています。
※「朝鮮王朝実録」とも呼ばれる。李氏朝鮮の初代太祖の時から純宗に至るまで27代519年間の歴史を編年体で編纂した1967巻948冊の実録。(ウィキペディアより)
与那国織の工程
① デザイン
② 絣括り(かすりくくり)
絹糸を横に張り、染めたくない部分を木綿糸で括る。
③ 染色
染料は黄色が出るフグン(フクギ)、茶色のティグティ(シャリンバイ)、ベージュや黒のカサギ(アカメガシワ)、インド藍など島に自生している植物から出る色を使う。種類によっては泥染めも使う。
④ 糸繰り
糸を使いやすくするため、綛(かせ)糸をボビンに巻く。
⑤ 整経
織り幅と着尺の長さを整える作業となり、経糸の本数と長さを引きそろえる。
⑥ 仮筬(かりおさ)通し
整経した糸を織りたい幅の筬に通していく。上糸と下糸の2本をひと組にして筬の目に通す。
⑦ 経巻(たてまき)
張力が均一になるように注意しながら、筬を通した糸を引っ張って整え巻いていく。
⑧ 綜絖(そうこう)通し
筬をはずして、糸を1本ずつ前後に分けて綜絖に通す。
⑨ 花綜絖がけ
花綜絖に糸を通す。この工程で花織の模様が決まる。
⑩ 織り
花綜絖を上げ下げしながら織っていく。(通常、1~2カ月で一反を織り上げる。)
幻の糸、とぅんびゃんを受け継ぐために
多くの職人によって受け継がれてきた沖縄の織物文化の中でも、与那国島の糸「トゥンビャン」でできた織物は「幻の織物」として語り継がれてきたそうです。
「トゥンビャン」は戦前まで沖縄で使用されていた糸であり、上流士族の外出着として沖縄本島(首里・那覇)にて生産されていましたが、沖縄戦の惨禍によって文化が途絶えてしまい、素材さえ分からなくなかった状況だったそうですが、与那国の大切な文化を継承するため、請舛さん中心に与那国島の先輩からの助言をもとに研究を続け現在は工房を開設するまでとなっています。

現在は後継者不足の課題もある中で請舛さんはじめとする職人さんが一生懸命後世に引き継げるよう、織物文化を伝えています。
皆さんも、沖縄に行かれた際は是非、織物の歴史や文化に触れてみてください!そして、一足延ばして与那国に行かれた際は幻の織物、トゥンビャンに出会える機会があるといいですね。