100年以上続く伝統行事!旧正月大晦日「マースヤー」で賑わう粟国島の夜
粟国島には、毎年旧暦の大晦日夜に行われる「マースヤー」という100年以上も続く伝統行事があります。「マース」とは方言で塩のこと、「マースヤー」は「塩売り」という意味があるそうです。
島の居住区は小字と呼ばれる11の地区に分かれており、地区別に伝わる着物や衣装をまとって三線と歌と踊りで各家庭を訪れながら無病息災や五穀豊穣を祈願します。
練習は1週間ほど前から各地区の集会所で行われ、年配の方から子どもたちまで集まり、伝統的な踊りの練習や小物づくりなどを夜な夜な重ねます。長年踊られているベテランの方々から手の動き、足の運び方、顔の向きなど踊りのポイントが伝えられ、わいわいと賑やかです。集会所での練習は「地域のつながりが作られる大切な場なのよ~」と教えてもらいました。
大晦日が近づくと各集会所の前には提灯が下がり、小字の名前が入ったカラフルなのぼりが上がります。デザインも様々で、この時期は集落内を散策しながら見て歩くのも楽しいです♪
大晦日の当日午後を過ぎると、早いところでは衣装や化粧などの準備が始まり、夕方には子どもたちも学校から帰宅して集会所にやってきます。女の子たちはマースヤーのために、次々と髪の毛をカンプーに結ってもらっていました。着物の柄や色彩が華やかで、ハレの日の楽しみが伝わってきます♪
夜20時、私の住んでいる泊原地区の集会所からマースヤーがスタートしました。各家の庭に太鼓と三線を鳴らしながら入り、ご挨拶。踊りを披露しつつ、お酒やお菓子、ご馳走などが振る舞われます。この日は島を出ているご家族のみなさんも多く戻られているので、子どもたちも増えて賑やかです。自宅の庭で子どもたちが踊る姿を見ている年配の方々も嬉しそうでした。
翌日朝方まで、夜空に鳴り響く太鼓と三線の音
踊り終えた家から次の家に向かって荷物を運び、夜の路地を歩いていると違う地区の踊りの音楽が時々聞こえてきます。地区ごとに曲目や曲数、周る家の件数、スタートの時間も違うので、早く終わった地区の方が見学に来ていることもありました。家をまわる際の作法も、“口上を述べながら、塩を用意されたお盆に盛る”など地区別によって違いがあり、おもしろい見どころでもあります。
泊原地区がすべての家を周り終えて終了したのは深夜3時。他の地区の太鼓の音もまだ鳴り響いていました。太鼓と三線の音が夜空に響きわたり、きらびやかな衣装が揃って夜のフクギ並木を歩く姿はとても美しいなと思いました。
この後、年明け2日はフェリーの安全祈願を祈る「船ウクシ」、3日には浜地区がメインで行う「村ウクシ」とお正月の行事が続きます。粟国島ならではの伝統的な空気を感じられる「マースヤー」は粟国村観光協会で毎年ツアーも開催しており、現地で見学や参加することも可能です!
記者:金村千沙(かなむらちさ)
北海道出身。フリーペーパーの編集者を経て、NPO法人に勤務。子どもの自然体験、環境教育、自然ガイド、地域づくりの仕事に携わる。2019年5月より沖縄県粟国村地域おこし協力隊として観光振興を軸に活動中。趣味は粘菌探しと粟国島のウーグの浜でぷかぷかと浮かびながら夕焼け空を眺めること。
粟国島地域おこし協力隊ブログ
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