【名桜大学レポート】沖縄県民による沖縄「観光」
【名桜大学レポート】沖縄県民による沖縄「観光」
「ウィズ/アフターコロナ」を踏まえた沖縄観光に関するミニ意見・アイディア
【名桜大学:大谷】2020年度 大谷研究室のOKINAWA41記事作成基本方針
●はじめに
今回このテーマを選んだ理由は、新型コロナウイルス感染症拡大によって県外および海外からの観光客来訪が激減したと考えた場合、沖縄県民が積極的に「観光」をすることで、減少した消費額を少しでもカバーすることができるのではないかと考えたからである。また私自身、沖縄で産まれ育ったが、修学旅行などの学校行事以外で沖縄を「観光」する機会が少なかった。観光学における概念的解釈では、ここでの「観光」は日帰り旅行や行楽に該当することにはなるが、積極的に県民に沖縄観光を促し、観光する機会を増やすことで沖縄の魅力を再発見でき、感染症終息後は県民が沖縄の良さをさらにアピールすることも期待できるとも思ったからである。
1.背景
沖縄県文化観光スポーツ部観光政策課によると、平成29年度の沖縄県の旅行・観光消費額は7,793億円である。そのうち、沖縄県民の旅行・観光消費額は814億円であり、全体の約1割と低い割合ではある。内閣府の「平成28年度県民経済計算について」によると沖縄の1人あたりの県民所得は227万3千円で、1位の東京都の534万8千円に比べると約300万円の差があり、日常生活圏での消費は必然的に少なくなるだろう。しかし全体の約1割とはいえ、域外からの来訪が困難な中、外出自粛が出ていない状態を仮定すれば県民による消費額を増やすための沖縄県民による沖縄「観光」をより推進することも効果的なのではないだろうか。
2.内容
沖縄県企画部統計課によると、令和元年の1世帯当たり年間の品目別支出金額の旅行の支出は51,395円である。単純な考え方ではあるが、沖縄県の世帯数は560,424(平成27年国勢調査)なので旅行支出と掛け合わせると約288億円となる。また、沖縄県民の旅行・観光消費額から1世帯当たりの県内消費額は約145,247円となり、域外からの観光収入に代替するためには10倍の約145万円を支出しなければならない。これは非現実的だが、2倍3倍と沖縄県民の旅行・観光消費を高めていけば、国内外での消費分約288億円を加えて全体の約4割程度まで引き上げることができるのではないだろうか。
消費額を増やすためには、まず多くの県民に利用してもらなければならない。そのためには、幅広い年齢層に合わせたプランを提供することや、ときには所得に応じた価格を設定することもあり得るかもしれない。低所得者には半額で商品を提供し、学生向けにはいくつかのレジャーをセットにしてお手頃価格で提供する。さらに、割引券や特典と引き換えに情報発信してもらうことも有効である。遊びや体験型などのレジャーは、三密を避けるためにも屋外をメインにし、バードウォッチングやシーカヤックなどのエコツアーや、マリンアクティビティなど沖縄の自然を生かしたものを中心にする。宿泊施設は、ホテルだけでなく、自分でテントやキャンプ道具などを用意しなくても気軽にキャンプ体験を楽しむことができるグランピングをより広めていくことも効果的だろう。
3.実現可能性
沖縄県民による沖縄「観光」のアイディア実現に向けた課題としては、それぞれのレジャー施設や宿泊施設に過度の負担が生じないように適切な公的支援ができるかということである。現在沖縄県では、県内の対象事業者が県内在住者向けに「宿泊を伴う旅行商品」を販売する「沖縄彩発見キャンペーン」を行っている。このキャンペーンのように、沖縄県内の旅行会社などの事業者に支援を受けた上で動いてもらうことも必要である。また、県内の大手企業にバックアップしてもらうために、観光産業以外の企業と双方にプラスになるようなプランを考案していくことも有効である。
県などの公的支援の視点は、費用を上回る効果が見込めることが前提になるが、現時点では回復期までの事業継続性という観点も含めて県民の消費を喚起していくことが望まれる。
●おわりに
沖縄県民が積極的に観光をし、消費額を増やすことで沖縄の観光経済のみならず沖縄の経済全体の縮小をも食い止めることができると考える。回復期に向けて一旦は域外からの来訪を止める時期が必要かもしれない。観光以外の産業の維持と、観光に頼り過ぎない沖縄を考えることも必要だろう。しかし、まずは沖縄観光の維持のため、この取り組みを幅広い世代に利用してもらうためにはどのように発信していくのか、どのように消費を喚起していくのかを考えなければならない。最後に、適切な形で誰もが沖縄観光を楽しみ、観光客で賑わう沖縄が戻ってくることを望んでいる。
【引用文献・引用サイト】
沖縄県(2018)『平成29年度沖縄県における旅行・観光の経済波及効果【推計結果】』
沖縄県文化観光ス ポーツ部観光政策課
「平成 28 年度県民経済計算について」内閣府(2020年6月23日閲覧)
https://www.esri.cao.go.jp/jp/sna/sonota/kenmin/kenmin_top.html
「1世帯当たり年間の品目別支出金額」沖縄県企画部統計課(2020年7月1日閲覧)
https://www.pref.okinawa.jp/toukeika/fiaes/fiaes_index.html
■筆者(2020年7月上旬作成)
名桜大学国際学群観光産業専攻
大谷ゼミ3年次 島崎 杏実