【名桜大学レポート】みんなで地元のツアーガイド-地元の魅力発見・発信-
【名桜大学レポート】みんなで地元のツアーガイド-地元の魅力発見・発信-
「ウィズ/アフターコロナ」を踏まえた沖縄観光に関するミニ意見・アイディア
【名桜大学:大谷】2020年度 大谷研究室のOKINAWA41記事作成基本方針
●はじめに
新型コロナウイルスの影響によって人々の生活様式が変化していく中で、どのように地域観光を維持していくべきだろうか。
大学の協定校であるカナダのレスブリッジ大学に留学した際、Introduction of Human Geographyという講義で「JENE‘S WALK」というまちづくりイベントについて学んだ。このイベントは、地域に住む住民がある分野に焦点を当てながら、同じ地域に住む方々へ向けてまちを紹介する運動で、JANE’S WALKの目的は、自分のまちの魅力や歴史、改善点などを発見するにある。本来、このイベントは30人前後で行うが、新型コロナウイルスの影響により大人数で集まることが難しいため、オンラインで個々人に地域の魅力を発信できるシステムがあれば面白いのではないかと考え、この企画を提案する。
1.背景
2020年3月12日、世界保健機関(WHO)は新型コロナウイルス感染症をパンデミック・世界的流行だと宣言した。日本でも感染症の流行により、政府から国境や県をまたぐ移動を控えるよう呼びかけられ、STAY HOMEといったおうちで過ごすことが推奨された。
沖縄県では新たな感染者が55日間ゼロとなり、教育や経済活動が平常へと戻りつつあった6月中旬、観光政策に関して沖縄県(2020)は6月1日からステップ1として県内旅行の促進、6月19日から全国の観光客の受け入れを徐々に促進する方針を発表した。日本交通社(2020)の調査では「居住都道府県内の旅行」に15.7%の人がすぐに行きたいと答えている。また、少し時間が経ってから行きたいが49.3%と、合計して半数を超える。さらに、居住地別に予定・検討している国内旅行の行き先としては、居住地と同じ地方を検討している比率が高い。さらに、観光の再開に対して、29歳以下の若者の半数が観光の前向きな回答をしている。これらの状況やデータから、すぐに再開する観光の目的地は居住地の近場であり、そして若者に対しての需要が高いことがわかる。
2.内容
「みんなで地元のツアーガイド」の企画は、沖縄県の地域や分野別におすすめツアーを作成し、そのツアーをインターネット上で発信する企画である。ツアーの発信者および受信者となる主なターゲットは、沖縄を観光目的地とする若者、沖縄観光に携わる団体である。企画の手順としては募集、作成依頼、発信、集約の4つとなる。
2-1.目的別・地域別にツアーを募集
まず初めに、このツアーは目的別かつ地域レベルで区別する。例えば、食事、文化体験、景色、アクティビティなどに区分し、地域は市町村別で区別することができるだろう。
2-2.地域を散策しツアーを作成することを地域住民や団体に依頼
次に、地域に住む個人や団体に向けて目的にあったツアーを募集する。例えば、那覇市の沖縄料理食べまくりツアー、名護市の自然満喫でリフレッシュツアーなど、地域住民しか知らないような穴場的なスポットに加え、観光客に人気な場所も紹介してほしいと考えている。シーサー作り体験などの主に観光客をターゲットにしているお店を紹介することで、地域住民に新しい地元の楽しみ方を見つけてほしい。
2-3.ツアーをオンライン上にアップし、近隣の市町村などから県内客を獲得
これらのツアーはオンライン上で募集し、誰でも閲覧できるようにする。総務省(2017)の都道府県別インターネット利用率をみると、沖縄県のインターネット利用率は80%を超えている。そのため、ツアーをオンラインで提供することは、県内客の獲得に効果があると予想できる。地域住民が作成したツアーは、オンライン上に投稿されシェアされるシステムを利用する。提案されたツアーは「いいね!」やコメントなど人気を可視化でき、利用者にとって見やすい環境が整えば、居住地周辺または、近隣の市町村に訪れる際の1つのガイドブックのように活用できるであろう。
また、コロナウイルス感染症の影響により、いくつかの商業施設は自粛が緩和された後も時間を変更して営業しているが、実際に旅行の計画を控える理由の一つとして、感染症への恐怖の他に旅行先の情報が少ないとの意見がある。そのため、提案ツアーから商業施設のホームページやSNSなどURLを貼り付けはもちろん、営業時間やウイルス対策についてより詳しい情報を提供できるようにしたい。
2-4.オンラインガイドブック化で、ウィズ/アフターコロナでは県外観光客の獲得
コロナ終息後には、このオンラインツアーを来沖する観光客の方々にも利用してもらう。スマートフォン1つで簡単にローカルの魅力と情報を集めることができ、さらに一つの地域をより詳しく知ることができるため、沖縄観光での目的地が増えることに期待できるだろう。
3.実現可能性
「みんなで地元のツアーガイド」の企画を行うにあたり、3つの課題を考えたい。
3-1.投稿者の募集方法
まずは、どのように投稿者を募るかである。投稿者を募集するにあたっては、まず初めに地域の観光協会などの地域団体の協力を要請してはどうだろうか。次にSNSなどを使かって個人事業主や、個人への宣伝活動を行う。総務省(2017)は、SNSの利用率について2016年に全体の71.2%がSNSを利用していると発表した。加えて、20代・30代は90%を超えている。また渡辺(2019)は、Instagramを主に利用する人の特徴として「いろいろなことに関心を持ち、行動的な動向がみられる」と述べている。そのため、投稿者になりうる人が存在すると期待できる。Twitterは若者のユーザーが半数を超え、リツイートという他者の投稿を再度投稿することができる機能があるために拡散効果が見込める。これらのことから、特にInstagramとTwitterを利用しての宣伝が効果的であろう。
3-2.プラットフォームの作成
次に、このツアーを募集し掲載するプラットフォームについて2つの方法を考えたい。まず1つ目に、オンライン上でツアーを募集・投稿するサイトを立ち上げる方法である。写真や文字数に規定がないため、ある程度投稿者が自由に書くことができる。また、広告をつければ利益を生むことも可能である。
2つ目に、SNSなどの既存のアプリケーションでツアー専用アカウントを作成し、ツアー募集を行う方法である。渡辺(2019)は、「若年層にとってSNSは情報ツールとしての役割が大きい」と述べている。すでに使われているアプリケーションを利用することで、企画がより早く拡散するのではないかと考える。例えば、InstagramやTwitterにはハッシュタグの機能があり、この企画のためのハッシュタグを考え、投稿者は自分の考えたツアーにハッシュタグをつけるだけで発信できる。投稿されたツアーを、リポスト機能などを使って企画のアカウントで再発信することも可能である。
3-3.ツアー参加による特典
この企画の参加者を増やすために、割引制度なども活用したいと考えている。例えば、同ツアー内で紹介されているA店からB店に足を運ぶお客さんに対して「20%オフ」「ドリンクのサービス」を付与することなどである。割引制度を活用するためには、企業側の協力が必要であり、企業側がツアーに参加することで企業側の利益向上と、近隣の店との結びつき強化が狙える。また、店側にこの企画に参加していることを宣伝してもらうことで、このツアー企画自体の宣伝にもなるのではないかと考える。
●おわりに
今回は、オンライン上での地元の魅力を再発見、発信する一つの企画を提案した。コロナ禍において、新たな地域の魅力をオンラインガイドブック化することで、県内客の増加、そして今後は観光客の増加にも繋がることを望んでいる。将来的には、中国語や英語など他言語にも対応できるようなオンラインツアーガイド企画に高めたいと考えている。
【引用文献】
JTB総合研究所(2020)『新型コロナウイルス感染症拡大による、暮らしや心の変化及び旅行再開に向けての意識調査(2020)』
日本交通公社(2020)『新型コロナウイルス感染症流行下の日本人旅行者の動向』公益財団法人日本交通公社
日本交通公社(2020)『新型コロナウイルス感染症流行下の日本人旅行者の動向(その2)‐JTBF旅行実態調査結果より-』公益財団法人日本交通公社
沖縄タイムス「沖縄は56日連続で新規感染ゼロ 新型コロナ検査」2020年6月25日
渡辺洋子(2019)「SNSを情報ツールとして使う若者たち」『放送研究と調査』、pp.38-56
【引用サイト】
「沖縄県の県外渡航自粛・観光受入方針について」沖縄県HP (2020年7月1日閲覧)https://www.pref.okinawa.jp/site/chijiko/koho/documents/tokou_20200529.pdf
「Rolling updates on coronavirus disease (COVID-19)」World Health Organization
https://www.who.int/emergencies/diseases/novel-coronavirus-2019/events-as-they-happen (2020年7月1日閲覧)
■筆者(2020年7月中旬作成)
名桜大学国際学群観光産業専攻
大谷ゼミ3年次 幸地 萌夏