投稿日:2021.08.02

食材探訪vol.9-沖縄SVが目指す地域創生のプロジェクト

日本では、一人一週間あたり平均10.62杯飲んでいるそうです。
(※全日本コーヒー協会調べ(平成30年))

今回は、世界で愛されるコーヒーを沖縄で育て、ハワイのコナコーヒーのように沖縄のコーヒーを有名に!という思いを胸に、そして地元の活性化につなげたいと活動されている沖縄SVさんの取り組みを紹介致します。

沖縄SV-沖縄コーヒープロジェクト-

沖縄SVは沖縄県を本拠地としたクラブチームであり、アルゼンチンのボカ・ジュニアーズやドイツ・ブンデスリーガでも活躍された、元日本代表の高原直泰選手が2015年に自ら立ち上げ、代表を務められているクラブです。

チームの強さだけではなく、勝敗に関係なく老若男女、地域の人々皆に愛され、生活に溶け込んでいるクラブ。

地域にとってなくてはならないシンボルでありコミュニティの核になるようなクラブを創りたいという思いで活動されてます。

「沖縄コーヒープロジェクト」は地域の課題を共に解決しながら、スポーツを通じて地域に産業を興すという強い思いと共に進められているプロジェクトです。

まずは沖縄SVのあゆみと共に、沖縄コーヒープロジェクトをご紹介します。

沖縄SVのあゆみ

2015年、設立。

2016年、沖縄県社会人サッカーリーグに加盟、高原代表は監督・選手として出場。

2017年には県1部へ昇格の後、九州各県リーグ大会で優勝、九州サッカーリーグ昇格

2019年には開幕17連勝して九州サッカーリーグで初優勝。

全国地域サッカーチャンピオンズリーグ20192020に出場。

チーム設立から6年、JFL入りを目指し快進撃を続けています。

沖縄SVとコーヒーファーム

【地域における社会の課題をスポーツのチカラを使って解決する】


<インタビューより>

沖縄SVではチーム設立当初から地域の課題を見つけ取り組んできました。

選手・スタッフも、地域への取り組みは当然のこととして活動をしています。

海外で長くプレーした中で、サッカーチームが地域の中心にあって地域と共に活動をしている姿をみてきたその経験が、この沖縄コーヒープロジェクトの発端となっています。

 

プロジェクトが生まれるまで 

<インタビューより>

強いチームを作るだけでは地元に愛されるチームにはなれない。

地域の持つ課題を共に解決してこそ
地域に根差したチームに
育つという思いがあります。

近年、沖縄農業には農業従事者の高齢化や後継者不足による耕作放棄地の増加などの課題がありました。

この課題解決のためには「沖縄の優位性が出せ」かつ「若者がチャレンジしたくなる農作物」の栽培が必要と考えました。

「今後、消費が拡大していく」、「沖縄などの限られた場所でしか作れない」、「ツーリズムを組成」をキーワードに気候的に国内で栽培できる場所が限定され、かつ需要が高まるコーヒーを沖縄で作ることができないかというところにたどり着きました。

そこから沖縄コーヒープロジェクトが生まれました。

沖縄とコーヒーベルト

寒さに弱いコーヒーは気候などの条件がとても大切。
成長期には雨を必要とし、収穫の時期には天気の良さが必須。

コーヒーの栽培条件を調べてみると
気温は1年を通じて20度前後と安定していることが条件であり、
かつ朝晩の温度差があれば引き締まった美味しいコーヒー豆が育ちます。

さらに水捌けの良さも必要なのです。このように栽培できる地域が限られているのもコーヒーの特徴。

この条件を踏まえ、世界をみてみると主な産地は赤道を挟んで北緯25度~南緯25度の地帯、エチオピアやブラジル、メキシコ、グァテマラ、ハワイなどが有名です。このコーヒーの栽培に適した地帯をコーヒーベルトと呼びます。 

日本に住んでいると暑い島沖縄!というイメージですが、コーヒーの栽培の観点からみるとギリギリです。

 

沖縄コーヒープロジェクト

<インタビューより>

このプロジェクトをすすめるにあたり、ジュビロ磐田時代のメインスポンサーだった、「ネスレ日本」に支援をお願いしました。

高原代表の思いに賛同いただき、永続的に支援を続けることを約束してくださいました。

というのもスイスに本社を置くネスレは、コーヒー豆の栽培から製品の製造・流通・消費まで全ての工程に関与する「ネスカフェ プラン」というプログラムに取り組んでおり、事業活動を通じて社会的な課題を解決する「共通価値の創造(CSV)」というアプローチを実践しています。

世界ではコーヒーの消費量は増えているものの、気候変動による影響やコーヒー農家の数が減少傾向にあることなどから、コーヒー栽培業の持続可能性が脅かされています。

世界で最も多くのコーヒー製品を製造するネスレにとって、高品質のコーヒーを継続的に確保することは非常に重要であり、「ネスカフェ プラン」を通じて、コーヒー農家に品質の良い苗木を提供し、コーヒー豆を栽培する上での技術支援を行い、収穫されたコーヒー豆を適正な価格で購入するなど、世界中のコーヒー生産者に対するサポートを行っています。

その「ネスカフェ プラン」を沖縄でスタートしました。

沖縄県の気候・土壌に精通する琉球大学の農学部と組むことになり、多くのコーヒー農園を持つ沖縄北部の名護市の協力を取付け、本格的にプロジェクトがスタートしました。

沖縄に新しい農産業が広まれば地域の活性化になりますし、地域に貢献できればチームも愛されるようになり、最高の好循環が生まれるのではないかと思っております。

今は沖縄に適した苗木の研究やコーヒー農家への苗木の提供に加え、チーム自らも農園を持ち、選手たちもコーヒー栽培にチャレンジしています。

今後の展望として、生産を成功させて沖縄コーヒー豆をブランド化したり、観光農園化し広げていきたいです。

コーヒーが開く未来の展望

2019年に正式にプロジェクトを立ち上げて以来、たくさんのメディアに取り上げられ話題を呼び、現在複数の農家からこのプロジェクトに参加したいとの声が寄せられているとのことです。

今後大切に育てられたコーヒーが沖縄の太陽をたくさん浴びてスクスクと育ち、沖縄を代表する新たな作物の一つとなる日が楽しみです。

スポーツの力で地域の課題の解決にチャレンジする沖縄SVさんの活動。

高原代表の「このプロジェクトにかける思いを沢山の方に伝えたい」という熱い気持ちが深く伝わってきました。

沖縄コーヒープロジェクトの他にも、サッカー体験教室を開かれたり、ジョギングをしながらゴミ拾いをされる「プロギング」活動など様々な活動をされています。

HPにもぜひ遊びに行ってみてください。

https://www.okinawasv.com/


参考資料・参考文献
沖縄コーヒープロジェクト資料
冨永靖弘 珈琲辞典 新星出版 2008
シアトル発ちょっとブラックなコーヒーの教科書

岩田リョウコ ガイドワークス 2017