食材探訪-vol.7 【みつ子ばぁばの台所】ここでしか味わえない通の味
食材探訪-vol.7 こだわり抜いた【ばぁばの味】
〜沖縄の食を求めて〜第7弾となる今回は
旭橋駅から徒歩5分「みつ子ばぁばの台所」へ。
こだわりに満ちたお料理の数々は
やんばる地方でしか味わえないお料理がずらり。
ご近所さんにも大好評だったという「みつ子ばぁば直伝のレシピ」
ここでしか食べられない沖縄の家庭料理に
沖縄の方はもちろん、全国からお客さんが足を運ばれます。
お客さんの「ありがとう」が何より嬉しいのですと語られる
「みつ子ばぁばの台所」代表、新城さん。
今日は多くのレシピの生みの親でもある新城さんにお話を伺います。
以下▶︎新城さん ▷聞き手中村
【みつ子ばぁばの台所】名前の由来
▷今日はよろしくお願いします。
お店の名前を聞いただけで優しいぬくもりを感じてしまいます。
とても素敵ですね。
▶︎こんにちは。よろしくお願いします。
お店の名前になっている「みつ子ばぁば」は私の嫁のお母さんなのです。
孫たちがみんな「みつ子ばぁば」と呼ぶので
そのままお店の名前になりました。
みつ子ばぁばは昔、小さな雑貨店を営んでいました。
沖縄では「まちやーぐゎー」と言います。
雑貨屋さんだったんですけど、
隣近所の方にお料理をお願いされるんです。
昔は仕出しなどがありませんでしたから、
冠婚葬祭の時にオードブルのようなものを作って欲しいと。
とても料理が上手なみつ子ばぁばなのです。
このおみせのレシピはおばぁ直伝なものが多いのですよ。
家庭料理を届けたい
▶︎うちには「ラフテー」はないんです。
ラフテーというのは宮廷料理の事で、豚の角煮はラフテーの流れです。
うちは豚の三枚肉を使った煮付けという家庭料理をお出しします。
▷ラフテー…初めて耳にしました。
お店のロゴにも「やんばるの家庭料理」と書いてありますね。
▶︎そうなんです。私の生家は昔、今帰仁(なきじん)にありました。
今は立ち退きになってしまい、故郷がなくなってしまいました。
そのような状況の中で「今帰仁をなんとかしたい」「やんばるを!」
という気持ちがありましたので
お店には「やんばるの家庭料理」というサブタイトルを付けました。
やんばる地域というのは恩納村(おんなそん)を境目に
それより北のエリアを指すのですが、
お酒もやんばる酒造のお酒を揃えています。
食材もやんばるのものを沢山使います。
▷食材にもこだわっておられるのですね。
▶︎はい。食べた方が「美味しかった」「ありがとう」と言ってくださる。
それが喜びに変わるのです。
私達の料理はその点をとても大切にしています。
食材へのこだわり
写真:島らっきょうの塩漬け
塩へのこだわり
▶︎塩にもこだわりがありまして、釜炊きの塩を使っています。
この塩は屋我地島(やがじしま)で採れたものです。
茶色い塩なんですよ。
調理にも、食卓塩も全てその塩を使っています。
1kg2000円くらいするのですが、これはこだわりですね。
※屋我地島の塩:400年の伝統製法を引き継ぎ、手作りされている塩。
鉄釜で煮詰められた塩は鉄分を含み赤茶色なのが特徴。
味はまろやかでコクがあると定評があります。
油へのこだわり
▶︎油に関しても、今帰仁アグーのラードを自分で絞って
野菜炒めなどを作っています。チャンプルもね!
▷油まで!すごいですね!
「ここでしか食べれない味を求めて」という方がいらっしゃるわけですね。
その中でも人気のメニューを教えてください!
人気メニュー
▶︎今原料が取れないのですが、やんばる地域の「モーイ豆腐」が人気です。
豆腐と言いながら豆腐ではないのですが、
モーイというのは海藻なので、イメージとしては
寒天を想像してもらったらいいと思います。
海藻の素材をそのまま使ったもので、これが人気でしたね。
▷モーイ?初めて聞きました。
▶︎モーイ豆腐は那覇の食文化にはないんですよ。
今は海の状況が変わってきていて原料が採れていませんが、
やんばる地域だけの食文化なので、
本来やんばるに行かないと食べられない料理なのです。
これはお店をオープンした時からずっと出していましたね。
※モーイ…イバラノリ科の海藻。緑色のものや紫紅色のものなどがある。
赤いものも茹でると緑色に変色。酢の物やモーイ豆腐として食される。
お客さんはどんな方が!?
▶︎ファミリー層から、会社の接待、観光客の方も多く来られます。
本土ではあまり食べれないと思うのですが、
沖縄では青いパパイヤを食べます。
青パパイヤは熟れる前のパパイヤで、
人参シリシリのようにして食べます。
パパイヤイリチーって言うんです。
人気がありますよ。
後はイカスミ系も人気がありますね。
イカスミソーメンもやっていまして
沖縄ではソーメンタシャーって言います。
メニューには沖縄の言葉が生き生きと
▷タシャー…ですか。初めて聞く言葉です。
▶︎メニューには沖縄の言葉を沢山使っています。
「フーイリチー」とか「パパイヤイリチー」とか。
聞きなれないと思うのですが、
これが正式な沖縄のチャンプル文化の呼び方なんです。
「そうめんチャンプル」と言いますが、
チャンプルというのは「豆腐」が入ってないといけません。
麩チャンプルというのは存在しなくて、
正式には「フーイリチー」なんですよね。
名前にもちゃんとこだわりを持っています。
正式にきちんと呼びたいので「ソーメンタシャー」としています。
▷タシャー、どういう意味なのでしょうか?
▶︎混ぜるとかそういった意味だと思います。
「タシャー」って昔から言いますよ。
ソーメンタシャーの作り方は
茹でた素麺に軽く塩をまぶして、ほぼ炒めません。
それがサラサラ感を出す秘訣です。
素麺は難しいですよ。ベトっとなってしまう…
▷なります!家で作るとベトっとなるか、
くっついて塊になるかのどちらかです(涙
▶︎くっつかないように作るんですよ(笑
茹でたら「ぬめり」を完全に洗い流してみてください。
そして水を切った段階ですぐに味を入れます。
麺がザルにある段階で味付けをして
ラードをひいたフライパンでさっと炒めます。
炒める時間はものの1分くらいです。
▷そうなのですか!?しっかりガッツリと炒めていました!
今度しっかりぬめりも洗い流して作ってみます。
▶︎あとはナーベラーも人気です。
ナーベラーはヘチマです。
夏野菜なのですが今は1年を通して食べることができます。
「ナーベラーブシー」としてお出ししています。
こちらは味噌ベースの味付けです。
▷ヘチマ…硬そうなイメージがありますが…
いえいえ、ナスみたいですよ!
水分の多いナスのような食感です。
▷えぇ!?それは驚きです!
▶︎水分がたくさん出るんです。
火を通していると味噌汁みたいになってしまいます。
そのくらい水分が多いんです。
炒める時に火を通しすぎず、食感を残すのがコツですね。
▷聞いたことのないお料理が沢山あって
食べてみたくてワクワクします。
新城さんがこれは食べてみて欲しい!とおすすめされるお料理はありますか?
25cm!骨にしゃぶりつけ!今帰仁アグー
▶︎今帰仁アグーは是非食べて欲しいです。
豪快に手でむしゃぶりついて欲しいですね!
大きさも25cmくらいあります。
めちゃくちゃ美味しいです。冷めても美味しいです。
そしてオリジナルのソーセージがありまして
「喜睦おじーのソーセージ」と言います。
「おじー」は「みつ子ばぁば」のお兄ちゃんです。
実はアルゼンチン帰りのおじーでして、
おじー直伝のアルゼンチンレシピから生まれるのが
「喜睦おじーのソーセージ」です。
腸詰めのソーセージをお店で手作りしています。
これまた大人気の他にない味のソーセージです!
おじー直伝アルゼンチンレシピ
▶︎鳥料理もアルゼンチンのレシピで、
スパイシーチキンとして出しています。
おじーがソースも作っているので
変わった味といえば変わった味ですね(笑
他では味わえないと思いますよ!
そして「今帰仁アグーのレバーの唐揚げ」もやみつきになる人続出です。
▷レバーの唐揚げですか?!ほんのり苦みがあるのでしょうか?
▶それがスマートな味わいなんです!クリーミーな感じですね。
うちのオリジナルのレシピで、オーダーが入ったらサッと唐揚げにしますよ!
料理経験ゼロ 全国を歩いた経験から生まれるレシピ
▷メニューがバラエティ豊かでオリジナリティに溢れているのですが、
レシピ開発はどのように取り組まれているのですか?
▶︎私…実は調理経験全くなかったんですよ。
このお店を始める前は、ホテルの営業をしておりました。
全国へ出張して40都道府県くらい周りました。
その時にあちこちのお料理を食べましたので、
その時の体験や経験を参考にしながら作っています。
この経験は食材を前にした時に、
「こうしたらいいな」というイメージの元になっています。
▷イメージとして湧いてくるのですね。
経験に裏打ちされた感覚というのでしょうか…
そうですね。感覚でイメージが沢山湧いてきます。
ぜひ一度食べにいらしてください!
終わりに
沖縄の食材にこだわり、特に故郷の今帰仁の食を大切にされている新城さん。
その想いに触れ、食べに行ってみたい!という気持ちはもちろん、
自分が作る日々のお料理への姿勢にも、
改めてきちんと向き合わないといけないなと感じました。
お客様の「ありがとう」を喜びに。
新城さんの今帰仁を思う熱く暖かな心と
沢山のご経験から生まれたお料理を食べにぜひ足をお運びください。
お店情報
沖縄県那覇市久茂地1-4-13 パークシティー泉崎2F
席数45席 カウンター・個室あり 貸し切り可能