【琉球芸能のゆかり#2】知らない魅力であふれるグスク「首里城」
【琉球芸能のゆかり#2】
知らない魅力であふれるグスク「首里城」
2019年10月31日の首里城火災を受けて、早1年が経とうとしています。
今回は、知っているようで知らない首里城についてご紹介します。
あの日、たまたま目が覚めた午前3時頃。ふとSNSを見ると、首里城が燃えていました。
多くの方が衝撃を受け、大きな喪失感におそわれた方もいると思います。
時は早いもので、今月末に火災から一年を迎える今。
どれくらいの方が「首里城」について考えているでしょうか。
再建は?観光客は?あの正殿は?
首里城があったからこそ残っている伝統芸能や文化がたくさんありますが、私たちはまだまだ、首里城を、沖縄を、知らないのかもしれません。
今回は、うちなーガイドをしている琉球大学の稲福政志(いなふくまさし)さんに首里城を案内していただきました。(以下、親しみを込めてまっしーさんと呼ばせていただきます笑)
彼のガイドはちょっとユニークなのです…!
まず、最初に紹介していただいたのは園比屋武御嶽石門(ソノヒャンウタキ)。
よ~く見ると屋根の上の右端部分がほかと違って黒くなっています。
実は、この部分だけが戦争当時から残っている貴重な遺構なので、世界遺産に登録されているのです。
沖縄の祈りは石や木などに宿る神様に向けて行うため、この石門ではなく、その後ろの方にある「御嶽(ウタキ)」に向かって祈りを捧げています。
パワースポットと称されることも多い御嶽ですが、本当の意味やいかに…?!
続いて、歓会門(カンカイモン)は城内への最初の門になります。
「歓会」には歓迎の意味があり、まっしーさん曰く、ウェルカムボード(^^)/
そして、門の下にはシーサー。
ここで謎がひとつ!
一般的には口を開けているのがオス、閉じているのがメスと言われ、門の両端にいるのですが、このシーサーは、面白いことに二体とも口が開いています。
牙があるかないかの違いで、胸元にはパイナップルのようなマークの飾りがついており、私もまっしーさんもここでしか見たことがありません!
何かほかの意味があるのかもしれませんね…
門をくぐると、何やら石碑が沢山たっています。
写真は「霊脈流芬(レイミャクリュウフン)」と書かれてあり、「霊妙の水脈から出る薫り高い流れである。」という意味があるそうです。
まっしーさんによると、「ここは薫り高い流れがあってイイネ!」のように、この場所を讃えた冊封使たちが書き遺していった、今の時代でいうツイッターなどで押す、イイネ!と近い感覚なのだとか。笑
そう考えると、読むのが難しい漢字もなんだか親近感が湧いてきますよね。
冊封使たちにも、共感したいことを書き残していくツイッター文化があったとしたら、、考えるとワクワクしてきます!
そしてまたまた、シーサー出現!
こちらは、口が開いている方と開いていない方の二つになっていますね。
ところがまた謎が…
胸元のマークがパイナップルのような模様とそうでないものに分かれています。
同じ城内に違う種類のシーサーがいるのはどうしてなのでしょうか。
まだまだ謎は深まるばかり…
そしてこちらは漏刻門(ロウコクモン)。
ここには、ある仕組みがあります。皆さんご存知でしょうか?
実は、門の上の櫓に水槽を置き、そこから漏れる水の量を利用して時間を測定する水時計のような仕組みがあったといわれているのです。
正確であったかどうかはわかりませんが、水で時間を測れるなんて驚きです。
また、別名「かご居せ御門(ウジョウ)」とも呼ばれているのですが、その理由は…
気になった方は実際に行って調べてみてくださいね(^^)
いよいよ正殿区域へ。
これは奉神門(ホウシンモン)
実は、この奉神門で、火災後初の正殿区域公開となった遺構式典にて琉球古典音楽を演奏しました。
かなり綺麗になりましたが、まだまだ火災の跡が残っています。
火災直後は瓦礫だらけで、まだ焼けた匂いも辺りに充満していました。
「県民を置いて進んでいく再建工事になってしまわないか心配だ」というまっしーさん。
その言葉にはどのような意味があるのでしょうか。
現在、少しでも早く復旧しようと再建工事に取り組んでいる人たちのおかげで、少しずつですが、
一般公開もされるようになり、前のような煌びやかな正殿はなくとも人々がまた首里城を訪れるようになりました。
けれども、そこから聞こえてくるある声…
「映えないな~」「お金払ってきたけど何も無いじゃん」「つまらない。」
そのような声を私も実際に耳にしたことがあります。
確かに、あの朱い立派な建造物は今はここにはありません。
写真を撮って沖縄に来た気分になるような要素も、前のような賑わいも、減ってしまったかもしれない。
けれども、首里城とは、ただの観光スポットなのでしょうか。
どうして世界遺産なのでしょうか。
綺麗な建造物でしかないのでしょうか。
果たして、現在の首里城には何も魅力がないのでしょうか。
そんなはずはないと私は思います。
火災後、遺構が公開され、今まで見えなかった部分が見られるようになりました。
私自身も含め、たくさんの人たちが、身近すぎた首里城とは何かを考えさせられるきっかけになりました。
” どうしてかは分からないけれど、涙が出た ”
そう話す若者を見た彼は、その「悲しい」の理由が分からないのが1番リアルな若者の声だといいます。
「若い人は、生まれた時から当たり前に首里城があったから、その悲しい気持ちが何なのか分からない人が多いと思う。その何かわからない気持ちを、僕はガイドを通して何か分かるようにしてあげたい。自分も含めて。」
ガイドブックに載っているようなことは今や簡単に調べることができてしまうからこそ、実際に行ってみてからじゃないと伝わらない、何かを伝える活動をまっしーさんは行っています。
ガイド終盤に紹介してくれた場所で、何やらしゃがみ込むまっしーさん…
一体何を探しているのでしょうか、、、皆さんは分かりますか?
こんな標高の高いところにこんな生き物が?!とあっと驚くような発見も、うちなーガイドでは体験することができます。
気になる方は是非、まっしーさんのガイドを活用してみてください♪
最後は龍潭池(りゅうたんいけ)の周りを「バリケン」と呼ばれる鳥たちとお散歩。
どんなに暑い日でも、不思議なことに、池の周りの場所に来ると涼しいのです。
木漏れ日が輝き、木々の間を細く通り抜けていく風。
首里城内だけでなく、周りの自然も感じられる場所がそこにはあります。
冒頭でも話したように、彼のガイドはとてもユニークで、発見と楽しさで溢れています。
それだけでなく、観光や沖縄の未来を本質的に見つめる、熱い若者の想いも聞くことができま
す。
そこには、一方的に紹介するのではなく、実際に相手と対話しながら、分からないことや疑問に思ったことを一緒になって考える、「体感する学び」が彼のガイドにはあるのです。
どちらも受け身にはならない、完全参加型の新しいガイドだと思います。
このような時だからこそ、外に足を向けて、今だからこそ見える歴史や、自然や、「なにか」を探しに行ってみてはいかがでしょうか。
それは1人でも、何人でも、あなたを待っているはずです。
「知っている首里城」から「体感する首里城」へ。
県民や国内外から真に愛されるグスクとなるよう、今日もたくさんの人たちが首里城を想い、活動しています。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
《Guide Profile》
稲福 政志(いなふく まさし/INAFUKU MASASHI)
琉球大学 法文学部 4年次 / うちなーガイド / 沖縄×SDGs / 首里城語り部 /
10月からYouTubeチャンネルを開設。沖縄の魅力を楽しさと共に伝えている。
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《Writer Profile》
照屋 綺恵(てるや きえ/TERUYA KIE)
沖縄県立芸術大学 琉球芸能専攻 2年次 / 琉球古典音楽三線 /
沖縄県立博物館美術館や首里城での演奏のほか、「星のや沖縄」「HOTEL ANTEROOM NAHA」
などでも演奏活動をしている。
琉球古典音楽を若い世代に広めるため、三線×箏からなるユニット「Re:finesse ~リフィネス~」
を結成。
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